かんしゃくの記録を、続く形でつけるには
記録をつけようと決めて、3日で止まった。そのノートがまだ引き出しにある。
よくあることです。そして止まった理由は、たいていやる気ではありません。かんしゃくの最中には書けないという当たり前の事実を前提にしないまま始めてしまった、というだけです。
最中には書けない、を出発点にする
起きている15分なり30分なりのあいだ、保護者は記録者ではいられません。手が離せないか、離せたとしても、そのとき書く余裕はありません。
だから記録は収まったあとにつけるものとして設計します。すると制約が2つ出てきます。
ひとつは、量が書けないこと。収まった直後はこちらも消耗しています。長い文章を書く前提にすると、その日は飛びます。
もうひとつは、直前に何があったかがいちばん抜けやすいこと。激しかった場面はよく覚えているのに、その3分前に何をしていたかは、数時間たつと曖昧になります。そして後述のとおり、あとで役に立つのはむしろそちらです。
残すのは3つだけ
支援の現場では、できごとを「前・行動・あと」の3つに分けて見る考え方が使われます。家庭の記録でも、この3つだけ残れば足ります。
① 前 — 直前に何をしていたか
着替えの途中だった。出かける5分前だった。やっていたゲームを止めるように言った。
時刻も一緒に。これが抜けると、あとから読み返しても「いつも突然起きる」としか見えません。
② 行動 — どうなったか、どれくらい続いたか
ここでは評価の言葉を使わないほうがいいです。「ひどかった」ではなく「25分」。「少し荒れた」ではなく「泣いて10分、そのあと自分で水を飲んだ」。
評価語は、書いた日の自分の疲れ具合で上下します。半年後に並べたときに比べられないのは、そこが揺れているからです。
③ あと — 自分がどう対応したか、どう収まったか
ここが最も抜けますが、最も使えます。別の記事(療育の面談で聞かれること)にも書きましたが、同じできごとでも、待ったのか、場所を変えたのか、要求を通したのかで、意味がまったく変わります。
「結局折れてしまった」と書くのは気が重い。それでも、書いてある記録のほうが役に立ちます。
強さを数字にするなら、3段階まで
「今日はどれくらいだったか」を数字で残しておくと、傾向は見やすくなります。ただし5段階以上にすると精度は上がりません。 つけた日の自分の状態で1段ずれるので、細かくしたぶんがそのまま誤差になります。
軽い・ふつう・重い。あるいは、ふだんの範囲か、範囲を超えたか。それくらいで十分です。
続かないときに削るもの
止まりかけたら、やめるのではなく削ります。順番はこれです。
毎日つけるのをやめる。 起きた日だけでいい。何もなかった日を書かないと傾向が歪む、という心配はもっともですが、まず残ることが先です。
文章をやめる。 単語でいい。「朝・着替え・20分・待った」で、半年後の自分には通じます。
1日1件までにする。 3回起きた日に3件書こうとすると、その日は0件になります。いちばん大きかった1件だけ。
書く場所を1か所に決める。 これは削るというより、最初に決めておく話です。ノートと携帯のメモと連絡帳に分散した記録は、読み返せません。読み返せない記録は、つけた時間が無駄になります。
1か月たってから見えるもの
記録の価値は、1件ずつにはありません。並んだときに出てきます。
曜日と時間帯の偏り。 これがいちばん大きい実利です。「夕方に多い」「週明けに多い」「予定が変わった日に多い」——本人にも保護者にも気づけなかったきっかけが、点が並ぶと見えてきます。見えれば、先に手を打てます。
効いた対応の再現。 そのとき偶然うまくいった関わり方は、記録がないと再現できません。
本当に増えているのかどうか。 ここで、知っておくと楽なことがあります。記録を始めた最初の2週間は、件数が増えて見えるのが普通です。 悪化ではなく、注意して見るようになったぶん、以前は数えていなかった小さなものが入ってくるからです。ここで「記録を始めたら悪くなった」と感じてやめてしまうのは、もったいないです。比べるのは、3週目以降の同じ数え方どうしにしてください。
読み返すときに、ひとつだけ
悪い日が続いた週を見ると、こたえます。
記録は採点簿ではありません。つけている人の対応を評価するために存在していないので、そう読まなくていいです。読む目的は、次に同じ場面が来たときの手がかりを拾うこと、それだけです。
つらくなるなら、読み返すのは面談や受診の前だけでいい。ふだんは、ただ溜めておく。
形式は問いません。ノートの端でも、カレンダーの余白でも、携帯のメモでも、半年後に読み返せる場所に3行あれば、それは十分な記録です。
この記事は保護者の方に向けた一般的な説明で、医学的・専門的な助言ではありません。お子さまの状態について判断が必要な場合は、かかりつけの専門家にご相談ください。
この3行をタップだけで残せるようにしたものとして、きょうのそらというアプリを作っています。時間帯ごとの偏りがグラフで出るので、1か月ためたあとに見返すところまで入っています。